国産翻訳AI「PLaMo 3 Translate」公開 ネットなしでどこまで訳せる?

日本語や英語を含む53言語のテキストを、ネットにつながずに翻訳できる国産AIが公開されました。Preferred Networks(PFN)は2026年11月5日、「PLaMo 3 Translate」をHugging Faceで公開しました。デモでは、最小モデルを機内モードにしたスマートフォンで動かしています。[1]

PFNが公開したのは、翻訳に使うモデルファイルです。使う前に、モデルと、それを端末で動かすためのアプリを用意します。モデルのサイズは、端末の空き容量や、訳したい文書の種類、使う言語に合わせて選びます。[2][3]

スマホやPCでオフライン翻訳。紙の資料や音声はどう扱う?

対応アプリを用意すれば、原文をクラウドに送らず、スマホやPCの中だけで翻訳できます。PFNが使ったスマホアプリは社内デモ用です。GIGAZINEは別のアプリ「PocketPal AI」を使い、iPhone 17 Proで最小の0.8Bモデルを動かしています。[2][4]

翻訳する箇所の前後の文章や、用語集もモデルに渡せます。たとえば、製品名の訳し方をそろえたり、日本語の訳文を「です・ます調」に指定したりできます。こうした指定ができるかどうかは、使うアプリの入力方法にもよります。[2][3]

紙の資料や画像を訳すには、まず文字を読み取ります。音声の場合は、先に文字起こしが必要です。PFNのサービス「PLaMo翻訳」のファイル翻訳や会議翻訳には、翻訳モデルと組み合わせて使うこうした機能も含まれています。[3][5]

0.8Bの公式資料によると、学習時の最大長は入力と出力を合わせて32,768トークンです。トークンとは、AIが文章を処理するときに使う単位です。この長さには、原文だけでなく、用語集や前後の文章、出力する訳文も含まれます。実行アプリにも上限があるので、長い資料は章や節ごとに分けると、訳文を確認しやすくなります。[3]

モデルは4サイズ。最小モデルの4ビット版は約0.57GB

同じ形式で比べると、0.8Bのファイルは0.57GB、2Bは1.81GBです。2Bを選ぶと、保存に必要な容量が1.24GB増えます。表には、モデル内部の数値を圧縮した「GGUF Q4_K_M」形式のファイル容量をまとめました。[6]

モデル容量使い方の目安
0.8B0.57GBスマホやPCで短い文章から試す
2B1.81GBPCで0.8Bの訳文と比べる
8B5.28GB余裕のあるPCで訳文の違いを確かめる
31B19.53GBメモリに余裕のあるPCやサーバーで検証する

表の容量は、ファイルの保存に必要な容量です。実行時には、アプリや翻訳途中のデータにもメモリを使います。PCでは「llama.cpp」で動かせるGGUF版が使えます。Apple Silicon搭載Mac向けには、「mlx-lm」で動かすMLX版もあります。[2][6]

同じ0.8Bをさらに圧縮した「GGUF Q2_K」は0.41GBです。Q4_K_Mに比べて約160MB小さくなります。PFNの評価では、日本語と他の言語の間の翻訳スコアが35.90から33.56に、英語と他の言語の間では54.47から51.15に下がりました。保存容量に余裕があれば、まずQ4_K_Mで訳文を確かめるとよいでしょう。[6]

GoogleやTencentと比較。53言語のうち何を測った?

PFNの評価では、0.8Bが日英翻訳と、日本語を軸にした多言語翻訳で、比較対象のGoogleとTencentのモデルを上回りました。英語を軸にした多言語翻訳でも、2Bが比較対象の全モデルを上回ったとPFNは報告しています。評価にはPFN独自のテストも含まれます。[2][6]

モデル対応言語数公開モデルのサイズ
PLaMo 3 Translate(PFN)530.8B、2B、8B、31B
TranslateGemma(Google)554B、12B、27B
Hy-MT2(Tencent)331.8B、7B、30B-A3B

対応言語数とモデルのサイズは、各社の公開資料に基づきます。言語ごとの翻訳品質は、PFNの評価資料で確認できます。[2][7][8]

PFNは、多言語翻訳の評価「FLORES+」で、対応する53言語のうち15言語を選びました。日本語と残り14言語、英語と残り14言語の組み合わせを、それぞれ双方向で評価しています。日→英と英→日の重複分を1件ずつ除くと、公開グラフの対象は計54方向です(14×2+14×2−2)。[6]

たとえば、韓国語とベトナム語はどちらも対応言語ですが、この比較には両言語を直接訳し合う結果は含まれていません。仕事でこの組み合わせを使うなら、必要な方向で実際の文書を翻訳し、原文と訳文を照らし合わせる必要があります。[6]

以前からあるオフライン翻訳。モデルの公開で何が変わる?

今回の公開で、利用者は翻訳モデルを入手し、自分で選んだアプリや社内システムに組み込めるようになりました。端末だけで翻訳する機能は以前からあります。Google翻訳は2018年に、端末上で動くニューラル翻訳をオフライン向けに導入しました。現在も、対応する言語ファイルを先に入れておけば、ネットなしで使えます。[1][9][10]

PFNも2025年5月に、企業の設備内で動く「PLaMo翻訳」を発売しています。2026年10月にはサービスを第3世代に更新し、テキスト翻訳などの対応言語を53言語に広げました。11月に公開されたのは、この第3世代のモデルです。[1][5][11]

旅行中に短い文章をすぐ訳すなら、使いたい言語を追加するだけで済む既存の翻訳アプリが手軽です。社内の用語集を反映させたい部署や、通信が途切れる現場向けのアプリを作りたい開発者なら、翻訳モデルを自分で組み込める分、用途に合わせやすくなります。

仕事で使うなら、訳文の確認や手直しにかかる時間も測る

小型モデルで翻訳が早く終わっても、手直しが増えれば、作業全体にかかる時間は長くなります。0.8Bと2Bを同じ端末で比べるときは、モデルが翻訳する時間と、人が訳文を手直しする時間を分けて記録します。

たとえば、2Bで訳すと1件あたり12秒長くかかると仮定します。100件なら、翻訳にかかる時間が20分増えます。手直しに1件あたり2分かかる場合、修正が必要な文書が100件あたり10件減れば、増えた20分を相殺できます。翻訳と確認を順番に進めるなら、11件以上減ったところで2Bのほうが早く終わります。これは比較方法を示すための試算です。

訳文を評価するときは、自然さより先に、意味が変わっていないかを確認します。原文が「48時間以内。ただし土日を除く」なら、数字と例外の両方が訳文に残っているかを見ます。用語集を使う場合は、同じ原文を用語集あり・なしで訳すと、指定した用語がどこで反映されたかも確認できます。

無償で使える条件と、社内文書を扱う前の確認

非商用なら、事前登録なしで無償で使えます。商用で無償利用するには、直近の事業年度の収入または売上が10億円以下で、利用目的を事前に登録する必要があります。商用利用の条件には関係会社も関わります。基準を超える場合は、PFNとの別契約が必要です。発表当日の訂正で、基準は「10億円未満」から「10億円以下」に変わりました。[1][6]

社外秘の資料を扱う前に、モデルを動かす場所と、アプリが原文や訳文を保存する場所をそれぞれ確認します。たとえば、翻訳が端末内で完結していても、保存先がクラウドと同期するフォルダーなら、訳文は外部に送られます。試験運用では公開済みの文書を使い、通信を切った状態と再接続した後の両方で、アプリや保存先の動作を確かめられます。

まとめ

PLaMo 3 Translateは、対応する機器とアプリを用意すれば、ネットなしでテキストを翻訳できます。まずは0.8Bで、ふだん使う言語や文章を試すと、どこまで任せられるかが分かります。長い資料や公開用の文書を扱うなら、翻訳の速さに加え、訳抜けや用語のばらつきを直す時間も比べると、用途に合うモデルを選びやすくなります。

関連ページ

同じPLaMoシリーズの閉域環境向け機能や、GitHub Copilotがローカル処理を使う仕組みは、以下の記事で扱っています。

出典

モデルの容量と評価スコアは、PFNの配布ページに掲載された値を使っています。

  1. Preferred Networksの発表資料(2026年11月5日)
  2. Preferred Networksの技術ブログ(公開形式、スマホのデモ、翻訳評価)
  3. Hugging Faceの0.8B公式モデルカード
  4. GIGAZINEのiPhone 17 Proでの動作例
  5. PLaMo翻訳の2026年10月アップデート
  6. Hugging Faceの公式比較表(各モデルの容量、評価範囲とスコア、ライセンス)
  7. GoogleのTranslateGemma発表資料
  8. TencentのHy-MT2公式リポジトリ
  9. Google翻訳のオフライン機能に関する2018年の発表
  10. Google翻訳ヘルプ(オフライン利用方法)
  11. Preferred Networksの企業向けPLaMo翻訳の発売資料(2025年5月)

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