GitHubは2026年10月28日、GitHub Copilot Fusionに、端末内のAIとクラウドAIを自動で選ぶ機能を追加しました。対象はCopilot CLI、Copilotアプリ、Visual Studio Codeです。利用者が設定で有効にする、実験的なプレビュー機能として提供されます。[1]
今回の更新は、AIの処理先を自動で振り分けるものです。インターネットに接続せずに使える「完全オフライン化」とは異なります。振り分けの判断には、引き続きクラウドを使います。
ローカルAIが回答を作る場合も、セッション全体の通信が止まるわけではありません。開発者は、AIが動く場所に加え、情報の送信先や外部ツールの通信も確認する必要があります。
※提供条件・公式文書は2026年10月29日時点。以下の試算は筆者の計算であり、実機での検証結果ではありません。
何が変わった?毎回モデルを選ぶ手間が減る
対応するローカルモデルを用意すると、Fusion Standardが作業に応じてローカルとクラウドを選びます。モデルとは、回答やコードを作るAIの本体です。ローカルモデルは、手元の端末でその処理を行います。[2]
これまでは、どのモデルを使うかを利用者が決める場面がありました。今回の機能では、対応する処理先の選択をCopilotに任せられます。ただし、すべての作業がローカルに移るわけではありません。
公式文書では、ローカルモデルの自動選択はFusion Standardが対象です。Fusion HighやFusion Maxでも同様にローカルモデルが選ばれるとは限りません。
10月7日の「モデル検出」から、自動選択へ
今回は、ローカルモデルを見つける機能に続き、処理先を自動で選ぶ機能が加わりました。GitHubは10月7日、CLIのバージョン1.0.94-0から、稼働中のOllamaにある対応モデルを検出できると発表していました。[3]
Ollamaは、ローカルでAIを動かすためのソフトです。10月7日の機能は、モデルを一覧に表示して選びやすくするものでした。モデルの導入や、自動選択の対象への登録まで行うものではありません。
対応環境を比較——CLIとアプリでは条件が違う
「接続して自分で選べるモデル」と「Fusionが自動で選べるモデル」は別です。自分でモデルを追加しても、それだけで自動選択の対象になるわけではありません。[1]
| 利用環境 | 今回の対応・導入方法 | 確認する条件 |
|---|---|---|
| Copilot CLI | Windowsでは管理機能を使った導入に対応。手動で構成すれば、Windows・macOS・Linuxでも自動選択を利用できる | 対応モデルと接続先を設定し、実験機能とFusion Standardを有効にする |
| Copilotアプリ | Windows ML経由で管理されるモデルの自動選択に対応 | 手動で接続したローカルモデルを自分で選ぶ機能と、自動選択の違いを確認する |
| VS Code | 端末内モデルの導入と、自動選択への組み込みに対応 | モデルの有効化に加え、詳細画面の「Use in Auto」も確認する |
CLIでは、MAI Code 1.1 FlashやQwen3.8 Flash Nextを、対応するローカル接続先で使う構成が案内されています。一方、アプリで自動選択の対象になるのは、現時点ではWindows ML経由で管理されるモデルに限られます。[1]
VS Codeでは、まずchat.copilot.localModel.enabledを有効にします。そのうえで、モデルの詳細画面にある「Use in Auto」などを設定します。企業向けの契約では、管理者がプレビュー機能の利用を許可しているかも確認が必要です。[4]
完全オフラインとの違い——通信を3つに分けて考える
「AIがどこで処理するか」「処理先をどこで選ぶか」「外部ツールがどこへ接続するか」は、それぞれ別の問題です。この3つを分けると、ローカル対応が何を意味するのか分かりやすくなります。
| 確認項目 | 今回の自動選択 | 外部通信を避ける構成での確認事項 |
|---|---|---|
| AIの推論 | ローカルとクラウドから選択 | 端末内、または外部接続のない社内環境のモデルに固定する |
| 処理先の選択 | Fusionによる振り分けの判断はクラウドで行う | クラウドでの自動選択に依存しない構成にする |
| ツールの通信・利用状況の送信 | ローカル推論だけでは通信停止を保証しない | CLIの設定に加え、外部ツールやエディターなども確認する |
GitHubは、ローカルで推論してもセッションはオフラインにならないと明記しています。ただし、この説明だけでは、振り分けの際にどの範囲の情報を送るのかまでは分かりません。「コード全体が必ず送られる」「一切送られない」のどちらも断定できません。[1]
顧客のソースコードなどを外部に送れない業務では、ローカルモデルを導入しただけで利用可能と判断するのは避けるべきです。自動選択を使うかどうかと、許可する接続先を先に決める必要があります。
CLIのオフラインモードも、接続先がクラウドなら通信する
Copilot CLIのオフラインモードは、GitHubへの接続を止める設定です。すべての接続先への通信を遮断するものではありません。公式文書では、COPILOT_OFFLINE=trueを設定すると、GitHubへの接続や認証、利用状況の送信が止まると説明しています。[5]
ただし、自分で設定したAIの接続先とは通信します。その接続先が外部のクラウドなら、質問やコードの情報はその事業者に送られます。外部から切り離して使うには、AIの接続先もローカルか、同じ隔離環境内に置く必要があります。
これはCLIの機能です。同じ環境変数を設定すれば、VS Codeやパソコン全体の通信も止まるという意味ではありません。
導入前の注意点——「96GB」が何のメモリを指すか確認する
公式資料にはメモリ要件の表現に違いがあり、「PCに96GB搭載すれば使える」とは一律に判断できません。MAI Code 1.1 Flashについて、アプリとVS Codeの記載を並べると違いが分かります。[6][4]
| 公式資料 | メモリの記載 | ストレージの記載 |
|---|---|---|
| Copilotアプリ | NVIDIA GPUが必要。利用可能な合計メモリは最低96GB | 最低60GBの空き容量 |
| VS Code | NVIDIA GPUのVRAMが96GB以上。GPUと共有する統合メモリも対象 | 導入に54.8GBの空き容量。ダウンロード容量は52.8GB |
VRAMは、GPUが処理に使うメモリです。一般的なPCのメインメモリとは区別します。アプリ文書の「combined RAM」と、VS Code文書の「GPU memory」を、同じ条件として読み替えることはできません。
記載が異なる理由は、確認した資料だけでは分かりません。購入や増設を決める前に、使う製品の要件と、端末上の導入画面を確認してください。
モデル本体がメモリに収まれば十分とも限りません。会話が長くなったり、読み込むコードが増えたりすると、追加のメモリを使います。Microsoftも、OSやアプリ、会話の処理に使う領域を含めて考えるよう説明しています。[7]
性能データを読む——ローカル版の成績は試験によって異なる
Microsoftの公開データでは、ローカル版が通常版を上回る試験も、下回る試験もあります。同社が10月7日に示したMAI Code 1.1 Flashの結果は、次のとおりです。[7]
| 試験 | 問題数 | 通常版 | 端末向けの圧縮版 | 差・筆者計算 |
|---|---|---|---|---|
| SWE-Bench Verified | 500 | 72.6% | 70.80% | 1.80ポイント低下 |
| Terminal-Bench 2.1 | 89 | 62.9% | 66.29% | 3.39ポイント上昇 |
前者はソフトウェアの修正、後者は端末上の作業を評価する試験です。差は「端末向け版-通常版」で計算しました。割合そのものの差を表すため、単位は「%」ではなく「ポイント」です。
ただし、これは提供元が特定の構成で評価した結果です。成績には、モデル以外の実行条件も関係します。ローカル版が上回った項目があっても、圧縮したことだけが原因とはいえません。
この表は、自動選択を使った場合の効率を測ったものでもありません。今回の機能で利用者の作業が何%速くなるかは、この数値からは計算できません。
独自試算——推論料金がゼロでも、買い替えが得とは限らない
節約額は、ローカルで処理した件数ではなく、実際に減ったクラウド利用料をもとに計算します。Microsoftは、ローカルモデルの呼び出しには推論料金がかからないと案内しています。ただし、端末の電気代や購入費は別にかかります。[8]
以下は、計算の考え方を示すために仮定した条件です。料金、消費電力、利用時間は実測値ではありません。また、Copilotの月額料金が下がったり、付与された利用枠の分が返金されたりするという意味でもありません。
| 仮定する項目 | 条件・計算 |
|---|---|
| 置き換え前に追加で払っていたクラウド利用料 | 月3,000円 |
| その費用のうち、ローカル処理への置き換えで削減できた割合 | 60% |
| 減るクラウド利用料 | 3,000円×60%=月1,800円 |
| ローカル処理による追加の電気代 | 0.15kW×40時間×30円/kWh=月180円 |
| 差し引きの削減額 | 1,800円-180円=月1,620円 |
| 導入に追加で6万円払った場合 | 60,000円÷1,620円=約37か月で回収 |
この条件では、追加の支出を回収するまでに約3年かかります。もともとクラウドの追加課金がなければ、ローカルに置き換えても支払額が減らない場合があります。対応する端末をすでに持ち、追加課金が多い人なら、試す余地があります。
なお、「要求の60%をローカルで処理した」と「費用が60%減った」は同じではありません。短い質問と長いコード修正では、処理量や単価が異なります。導入後は、処理件数と請求額を分けて比較する必要があります。
競合比較——Continueとの違いは、処理先の選択を任せるかどうか
選ぶ際は、自動選択の便利さを優先するか、ローカル中心の構成を自分で管理するかが判断の軸になります。比較対象のContinueも、ローカルモデルを使うオフライン環境の構築手順を公開しています。[9]
| 比較対象の構成 | 向いている目的 | 利用者が確認すること |
|---|---|---|
| Copilot Fusionの自動選択 | 対応するローカルAIとクラウドAIを手動で切り替える手間を減らす | クラウド利用の許可、対応端末、対象モデル |
| Copilot CLI+ローカル接続先+オフラインモード | CLIからGitHubへの接続を止め、指定したAIを使う | AIの接続先がどこにあるか、外部ツールや実行コマンドが通信するか |
| Continue+ローカルモデル | エディターでローカル中心の構成を組む | モデルの設定、匿名の利用状況の送信停止、導入ファイルの準備 |
Continueの公式手順では、拡張機能を導入し、匿名の利用状況の送信を止めたうえで、既定のモデルをローカルに設定します。ただし、ここで比較しているのは構成方法の違いです。同じ条件での速度や回答品質の優劣は検証していません。
ローカルなら安全?ファイル操作の権限は別に決める
AIを端末内で動かしても、ファイルの書き換えやコマンド実行まで自動的に安全になるわけではありません。GitHubも、モデルの実行とツールの隔離は別の問題だと説明しています。[10]
Copilotには、ファイルやネットワークへのアクセスを制限するローカルサンドボックスがあります。サンドボックスは、プログラムが操作できる範囲を制限する仕組みです。ローカルモデルの選択とは別に、設定を確認する必要があります。
オフライン構成では、使えなくなる機能もあります。CLIの公式資料では、Webからの情報取得やGitHub Code Searchなどが制限されると説明しています。外部情報を調べる便利さと、外部接続を減らす必要性を、用途に応じて判断してください。[11]
導入を判断するなら、回答速度より「修正を終えるまでの時間」を比べる
実用性を判断するには、AIの回答を待つ時間と、人が修正する時間を合わせて比べると分かりやすくなります。回答が速くても、修正や再試行が増えれば、作業全体にはかえって時間がかかるためです。
筆者は、同じリポジトリの同じ状態から作業を始めて比較する方法を提案します。軽い修正、複数ファイルの修正、テストの追加などを用意し、自動選択、ローカル固定、クラウド固定のそれぞれで、次の項目を記録します。
- 依頼してから、レビューを含む作業全体が完了するまでの時間
- テストの結果と、人が修正した回数
- 実際に使われたモデルと、クラウド利用料
- モデルの初回読み込みにかかった時間と、読み込み後の処理時間
- 処理中のメモリ使用量と、他のアプリへの影響
これは筆者が推奨する検証手順であり、測定結果ではありません。通信を制限する業務では、設定画面に加え、管理者が確認できる通信記録も判断材料になります。
今回の更新で、Copilotは手元の計算資源も活用しやすくなりました。普段の開発では自動選択の便利さを検討し、外部送信が許されない仕事では、接続先と通信制限を明確にした構成を選ぶ。導入時には、用途に応じた使い分けが必要です。
関連ページ
導入手順は、使う製品の公式文書で確認してください。プレビュー中のため、対象モデルや設定は変更される可能性があります。
- Copilot Fusionの仕組み・ローカルモデルの選択条件
- Copilot CLIにモデルを追加する手順
- Copilotアプリのモデル追加・端末要件
- VS Codeの端末内モデル・自動選択の設定
- Copilot CLIの認証・オフラインモード
出典・参考資料
事実関係は以下の一次資料に基づきます。比較表の整理、差の計算、費用の試算、検証手順の提案は筆者によるものです。
- GitHub:Copilot Fusionのローカルモデル対応(2026年10月28日)
- GitHub Docs:About GitHub Copilot Fusion
- GitHub:CLIのローカルモデル検出(2026年10月7日)
- VS Code:AI language models in VS Code
- GitHub Docs:Authenticating GitHub Copilot CLI
- GitHub Docs:Adding LLM models to the GitHub Copilot app
- Microsoft:Bringing local models and sandboxed tools to Windows and GitHub Copilot(2026年10月7日)
- Microsoft AI:MAI-Code-1.1-Flash(2026年10月7日)
- Continue:How to Run Continue Without Internet
- GitHub:ローカルサンドボックスの一般提供(2026年10月7日)
- GitHub Docs:Application card: GitHub Copilot Agents



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