Googleは2026年10月13日、AIモデル「Gemini 4 Argon」の提供範囲を広げました。開発者や企業は、有料のGemini APIで利用できます。Geminiアプリでは、Google AI ProとAI Ultraの契約者が対象です。[1][2]
今回注目したいのは、複数の手順を要する長い作業への対応と、11月30日までのAPI導入料金です。標準料金は、入力100万トークンあたり2ドル、出力100万トークンあたり10ドルです。12月1日からは、それぞれ4ドルと20ドルになります。[3]
ただし、単価だけでは実際の費用は分かりません。AIが答えを考えるために使う「思考トークン」も課金対象です。公式資料と競合の料金を確認しながら、思考量、キャッシュ、やり直しを含めた費用を考えます。
情報は2026年10月14日に確認しました。料金は米ドル表記です。独自計算は条件を固定した試算であり、実測結果ではありません。
何が変わった?9月の限定提供から利用範囲を拡大
Argonは9月30日に限定提供が始まったモデルで、今回、利用できる範囲が広がりました。当初は、Googleの「Fairwind Program」に参加する、信頼できると認められたサイバー防御の担当者などに提供されていました。10月13日の発表で、一般の開発者や企業、有料アプリの利用者にも対象が広がりました。[4][1]
| 利用先 | 今回の主な対象 | 確認する点 |
|---|---|---|
| Geminiアプリ | Google AI Pro・AI Ultra契約者 | 自分のアカウントでモデルを選べるか |
| Google Antigravity | Google AI Ultra契約者 | 開発ツールの利用条件と上限 |
| Gemini API | 有料APIの利用者 | 従量課金と利用上限。無料枠では利用不可 |
アプリの月額契約とAPIの利用料金は、分けて考える必要があります。AI Proでアプリ内のArgonを使えても、その契約だけで有料APIを無料で使えるとは限りません。APIの予算は、アプリの月額料金とは別に確認してください。[5]
「長い作業に強い」とは?調査や修正を重ねて工程を進める
Googleは、短い質問への回答に加え、調査や修正を重ねながら作業を進める能力を重視しています。想定する用途には、ソフトウェア開発、金融・法務の資料分析、科学研究などが含まれます。アプリについては、長い作業の途中で行う進捗報告も改善したと説明しています。[1][2]
例えば、プログラムの不具合を直すには、原因の調査、修正、テストが必要です。一度コードを書くだけでは終わりません。Argonは、こうした複数の工程を含む作業に向けたモデルです。
Googleの社内事例では、AntigravityでAIエージェントがコードを提出した件数が35%超増えました。変更を元に戻す「ロールバック」は、約3分の1減ったとしています。[1]
ただし、これはGoogleが報告した社内での結果です。コードの提出件数が増えたからといって、作業時間がそのまま35%短縮されたわけではありません。自分の仕事で役立つかを判断するには、完成までの時間や修正回数も測る必要があります。
独自分析①「最大100万トークン」の枠は入力・思考・出力で共有する
Argonの上限は、入力・思考・出力を合わせて1,048,576トークンです。入力と出力に、それぞれ100万トークンを使えるわけではありません。トークンは、AIが文章などを処理するときの単位です。日本語の文字数とは一対一で対応しません。[6]
APIの通常の同期処理では、出力の上限は65,536トークンです。これを超える長い文章などを生成するには、「long decode」とバックグラウンド実行を使います。バックグラウンド実行は、処理を続けておき、あとから結果を取得する仕組みです。[7][8]
入力が増えるほど、思考と出力に使える枠は減ります。公式に示された共通の上限から入力分を引くと、次のようになります。
| 入力に使ったトークン | 思考と出力に残る枠 | 計算式 |
|---|---|---|
| 200,000 | 848,576 | 1,048,576−200,000 |
| 800,000 | 248,576 | 1,048,576−800,000 |
上限をもとに独自に計算しました。システム指示なども入力に含めて数える必要があります。残りの枠がすべて、利用者に見える回答に使われるわけではありません。
本棚に例えるなら、資料と作業用ノートを同じ棚に置く仕組みです。資料で棚を埋めると、考えを整理するノートを置く場所が減ります。長い資料をすべて渡すより、必要な部分を選んで渡す方が適している場合があります。
過去との違い:大量の資料を読むだけでなく、長い推論や生成を続ける
「100万トークン」という数字自体は新しくありません。今回注目したいのは、長い推論や生成をどう続けるかです。Googleは2024年2月、Gemini 1.5で最大100万トークンの長い入力を扱う試験提供について説明していました。[9]
Argonでは、出力上限を以前の64Kから最大1Mへ広げたと発表しています。ただし、現在のAPI仕様では、その枠を入力・思考・出力で共有します。過去の「大量の資料を読む」という説明とは、区別して捉える必要があります。[4][8]
long decodeでは、64K単位で生成を続けます。長時間の処理を続けるための仕組みですが、使える枠が大きいことと、最後まで正しい答えを作れることは、分けて評価する必要があります。
API料金はいつ変わる?12月1日から標準単価が2倍に
APIを継続利用するなら、11月までと12月以降の両方の料金で費用を見積もる必要があります。公式料金表に記載されたStandard、つまり標準の従量料金は次の通りです。出力料金には、思考トークンも含まれます。[3]
| 課金対象 | 2026年11月30日まで | 2026年12月1日から |
|---|---|---|
| 入力100万トークン | 2ドル | 4ドル |
| 出力100万トークン(思考を含む) | 10ドル | 20ドル |
| キャッシュ済み入力100万トークン | 0.10ドル | 0.20ドル |
キャッシュは、以前に処理した共通部分を再利用する仕組みです。Argonでは、自動的に適用される「暗黙的キャッシュ」を使います。開発者が明示的に作成するキャッシュには対応していません。[5]
この表は標準料金です。Batchなどの別の処理方式では、料金が異なります。以下の試算では、比較条件をそろえるために標準料金だけを使います。
独自計算②答えが短くても、思考量で費用は変わる
利用者に見える回答が同じ長さでも、AIの思考量が増えると請求額は上がります。入力を10万トークン、見える回答を5,000トークンに固定し、思考量だけを変えて試算します。
| 仮定した思考トークン数 | 課金される出力の合計 | 11月までの1回分 | 12月以降の1回分 |
|---|---|---|---|
| 0 | 5,000 | 0.25ドル | 0.50ドル |
| 15,000 | 20,000 | 0.40ドル | 0.80ドル |
| 45,000 | 50,000 | 0.70ドル | 1.40ドル |
計算式は「入力数÷100万×入力単価+(思考数+回答数)÷100万×出力単価」です。キャッシュ、外部ツール料金、税、為替、やり直しは含みません。思考0は比較のための仮定であり、実際に必ず0に設定できるという意味ではありません。
思考15,000トークンの例では、月1,000回使うと400ドルかかります。12月以降は、同じ使い方でも800ドルになります。導入期間の1回あたりの費用は0.40ドルで、見える回答だけをもとに見積もった0.25ドルより60%高くなります。
Googleによると、思考の強さはlow・medium・highから選べます。既定値はmediumです。まず複数の設定で試し、必要な品質を満たす設定の中で、費用と待ち時間を比較するのが現実的です。[5]
独自計算③「キャッシュ95%引き」でも総額は95%減らない
95%引きになるのは、キャッシュが適用された入力部分です。思考や回答の料金まで95%安くなるわけではありません。入力10万トークン、思考を含む出力2万トークンの作業を例に考えます。
11月までの標準料金では、キャッシュを使わない場合は0.40ドルです。入力の90%にキャッシュが適用されると、費用は次のようになります。
| 内訳 | トークン数 | 試算額 |
|---|---|---|
| 通常の入力 | 10,000 | 0.020ドル |
| キャッシュ済み入力 | 90,000 | 0.009ドル |
| 思考を含む出力 | 20,000 | 0.200ドル |
| 合計 | — | 0.229ドル |
総額の削減率は、(0.40−0.229)÷0.40×100=42.75%です。入力部分の費用は大きく下がりますが、出力の0.20ドルは変わりません。思考や回答が長い用途ほど、入力の割引だけで総額を下げるのは難しくなります。
この試算では、入力の90%にキャッシュが適用されると仮定しています。実際に適用される割合は、リクエストによって変わります。運用時には、課金対象となったトークン数と、キャッシュが適用された量を確認する必要があります。[5]
競合比較:導入価格はSonnetと同額、通常価格はOpusと同額
Argonの入力・出力の標準単価は、導入期間中はClaude Sonnet 5.5と、12月以降はClaude Opus 5.5と同じです。価格を比較するときは、期間限定の単価と通常単価を区別してください。[3][10][11]
| モデル・期間 | 入力100万トークン | 出力100万トークン |
|---|---|---|
| Gemini 4 Argon:11月30日まで | 2ドル | 10ドル |
| Gemini 4 Argon:12月1日から | 4ドル | 20ドル |
| Claude Sonnet 5.5 | 2ドル | 10ドル |
| Claude Opus 5.5 | 4ドル | 20ドル |
標準の入力・出力単価を比較したものです。キャッシュの作成・読み出し、追加機能、処理方式などに関する料金は含めません。各モデルの能力が同じという意味ではありません。
同じ資料を渡しても、モデルによってトークン数の数え方は異なります。思考量やツールの呼び出し回数も違うため、単価が同じでも、作業1件にかかる総額まで同じになるとは限りません。
反証:Googleの公式比較表でも、Argonが全項目で首位ではない
Argonは有力な選択肢ですが、あらゆる仕事で競合より優れているとはいえません。Google DeepMindのモデルカードでも、試験によって結果が分かれています。モデルカードは、性能や制約をまとめた公式資料です。[12]
| 評価項目 | Gemini 4 Argon | Claude Opus 5.5 |
|---|---|---|
| Vals Index:業務分野を横断する評価 | 68.9% | 67.0% |
| DeepSWE v1.1:ソフトウェア開発の評価 | 77.9% | 74.2% |
| FrontierSWE v2:別のソフトウェア開発評価 | 55.0% | 62.3% |
| Terminal-bench 4.0:端末上の作業評価 | 57.4% | 66.4% |
Googleが公表した比較表から抜粋しています。評価方法や思考設定などの条件も確認する必要があります。異なる試験の数値を平均して、総合的な優劣を決めることはできません。
Argonが上回る項目もあれば、Opusが上回る項目もあります。「開発に強い」という説明だけでは、自分の作業との相性は分かりません。資料分析とコード修正は、それぞれ別の課題を用意して比べる方が判断しやすくなります。
公式資料には、事実と異なる内容を生成する可能性も記されています。長時間の処理では、遅延やタイムアウトが起きる場合もあります。出力上限が大きくても、回答の正確さや作業の完了が保証されるわけではありません。[12]
独自分析④単価より「使える成果1件の費用」で判断する
実際の仕事での安さを判断するには、1回の料金に加え、採用できた成果1件あたりの費用を比較する必要があります。以下はArgonの性能を測定した結果ではなく、やり直しが費用に与える影響を示すための仮定の計算です。
1回0.40ドルの作業を100回行うと、API料金は40ドルです。そのうち80件を採用できれば、成果1件あたりの費用は0.50ドルになります。採用できたのが50件なら、1件あたり0.80ドルです。
| 100回のうち採用できた件数 | 支払ったAPI料金 | 成果1件あたり |
|---|---|---|
| 80件 | 40ドル | 0.50ドル |
| 50件 | 40ドル | 0.80ドル |
計算式は「全試行の費用÷採用できた件数」です。この計算なら、失敗や途中終了にかかった費用も含められます。人が確認・修正に使った時間も記録すると、単価だけでは分からない違いを比較できます。
例えば記事制作なら、長文を生成できたかどうかだけでは判断できません。出典が実在するか、数値が合っているか、修正に何分かかったかも比較します。コード修正なら、テストに通ったかどうかや、人がその変更を採用したかどうかを基準にできます。
読者への影響:11月は試す期間、継続判断は12月の費用で
Argonを試す価値があるのは、長い作業をどこまで任せられるか確かめられる点です。継続利用を判断するには、12月以降の費用も見積もる必要があります。短い質問が中心なら、長い生成の上限を使う機会は少ないかもしれません。複数の資料を照合したり、修正と検証を繰り返したりする人ほど、試す意味があります。
AI Pro・AI Ultraの契約者は、まずGeminiアプリで自分の作業との相性を確認できます。APIで自動化する場合は、入力、思考、出力、キャッシュの適用量に加え、失敗した処理の分も記録します。導入期間の単価だけで予算を組むと、12月には費用の見込みが変わります。
試す課題は、普段の仕事から選び、比較するモデルに同じ条件で渡すと判断しやすくなります。完成までの時間、API料金の総額、成果の採用率、人が修正に使った時間を測ってください。その記録から、Argonが長い作業を続けられるかに加え、仕事を早く、安く終えられるかも確かめられます。
関連ページ
長い作業をAIに任せるなら、どんな成果を作れるかに加え、成果の確認方法や外部サイトなどで行う操作についても理解しておきたいところです。関連するテーマは、次の記事で詳しく説明しています。
- Claudeに「Dashboards」「Motion」——データから動くグラフや説明動画を作れる新機能
- Anthropic、OSSの脆弱性スキャンを無料提供——人間の確認を省く仕組みは保守を助けるか
- Claudeが警察のフォームに虚偽情報を投稿——Anthropic、内部評価のネット接続を停止へ
出典・公式資料
提供条件や料金は変更されるため、利用前に公式資料で最新情報を確認してください。本記事で参照した一次情報は以下の通りです。
- Google:Gemini 4 Argonの提供拡大(2026年10月13日)
- Google:Geminiアプリでの提供
- Google AI for Developers:Gemini API料金表
- Google:Gemini 4 Argonの初回発表(2026年9月30日)
- Google AI for Developers:Argonの仕様・移行案内
- Google AI for Developers:トークン数と共通上限
- Google AI for Developers:Argonのモデル仕様
- Google AI for Developers:long decode
- Google:Gemini 1.5の長いコンテキスト(2024年2月16日)
- Anthropic:Claude Sonnet 5.5の発表・料金
- Anthropic:Claude Opus 5.5の仕様・料金
- Google DeepMind:Gemini 4 Argonモデルカード



コメントを送信