Microsoftは2026年8月27日、Windows 11 バージョン24H2・25H2向けに、非セキュリティプレビュー更新プログラム「KB5120998」を公開した。タスクバーを画面の上・下・左・右へ配置する機能が、一般ユーザー向けにも段階的に展開される。
今回のポイントは、アイコンの「左揃え」ではなく、タスクバーそのものの位置を変更できることだ。ただし、更新を入れれば全員がすぐ使えるわけではなく、左右配置では検索ボックスと小型タスクバーに制限がある。
本稿では公式情報に基づく変更点に加え、画面の占有率、ウィンドウを2分割したときの横幅、ポインターの移動距離を試算する。計算は条件を置いたモデルであり、KB5120998を実機で測定した結果ではない。情報確認日は2026年8月30日。
出典:Microsoft「KB5120998」公式リリースノート
KB5120998とは?対象バージョンと提供条件
KB5120998は、機能や品質の改善を先行提供する任意のプレビュー更新だ。新機能のために、Windowsの次期大型アップデートまで待つ必要はない。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公開日 | 2026年8月27日(Microsoftの表記) |
| Windows 11 24H2 | 適用後のOSビルド:26100.9278 |
| Windows 11 25H2 | 適用後のOSビルド:26200.9278 |
| 更新の種類 | 非セキュリティ・累積プレビュー更新 |
| タスクバー新機能の提供 | 段階的。利用開始のタイミングは端末によって異なる |
ここで区別したいのは、「更新プログラムがインストールされた状態」と「新機能が有効になった状態」だ。同じOSビルドでも、設定画面に表示される項目がそろわない場合がある。
なお、「非セキュリティ更新」は、Windowsのセキュリティ更新を止めてよいという意味ではない。今回の任意更新を試すかどうかと、通常のセキュリティ更新を適用する判断は分けて考えたい。
出典:Microsoft「対象OS・ビルド番号・段階的な展開」
タスクバーを移動する方法と、上下・左右で異なる機能
移動には「タスクバーの位置」を使う。「タスクバーの配置/Taskbar alignment」でアイコンを左に寄せる従来の操作とは別の設定だ。
- 「設定」→「個人用設定」→「タスクバー」を開く。
- 「タスクバーの動作」へ進む。
- 「タスクバーの位置(Taskbar position)」で、上・下・左・右から選ぶ。
表示言語や展開状況によって、設定名や画面構成は異なる場合がある。新しい小型表示は、同じ「タスクバーの動作」にある「タスクバーのサイズ(Taskbar size)」で「小(Small)」を選ぶ。
| 配置 | 位置変更 | 検索ボックス | 小型タスクバー |
|---|---|---|---|
| 下 | 対応 | 対応 | 対応 |
| 上 | 対応 | 対応 | 対応 |
| 左 | 対応 | 現時点では非対応 | 現時点では非対応 |
| 右 | 対応 | 現時点では非対応 | 現時点では非対応 |
「タスクバーのアイコンをまとめない」など、多くのカスタマイズ設定は4方向で利用できる。一方、左右配置で検索ボックスが使えないことは、Windowsの検索機能全体が使えなくなるという意味ではない。
小型表示はアイコンだけでなく、バーの高さも縮める仕組みだ。「左右に移して、さらに小型化する」という組み合わせは、今回の提供段階では選べない点に注意したい。
出典:Microsoft「現在の設定経路と制限」、Microsoft「タスクバーの位置変更・小型化の設計説明」、Microsoft「従来のタスクバー配置設定」
スタートメニューと検索も変更。日本語環境向けの改善も
タスクバー以外では、スタートメニューのサイズや表示内容、検索結果に含める候補をユーザーが選びやすくなる。
| 変更箇所 | 主な内容 | 読者への影響 |
|---|---|---|
| スタートのサイズ | 「自動」に加えて「小」「大」を選択可能 | 画面全体の拡大率を変えず、メニューを調整できる |
| スタートの表示内容 | ピン留め・最近使用・すべての各セクションを個別に表示/非表示にできる。「Recommended」は「Recent」へ改称 | 必要な項目を中心とした構成にできる |
| プロフィール表示 | スタート内の名前とプロフィール画像を非表示にできる | 画面共有時に、その場所から個人情報が見えるのを避けられる |
| Windows Search | 結果の出所を明確化。Web・Microsoft Storeの候補を表示するか設定可能 | PC内のファイルと外部の候補を見分けやすくなる |
| エクスプローラー | ホームの起動・応答性を改善 | 日常的なファイル操作での改善が期待される。ただし本稿では短縮時間を実測していない |
| 日本語環境 | 日本語IMEのハング軽減、RemoteAppの日本語入力、従来版Outlookの検索などを改善 | 該当する入力・検索の問題がある環境では、タスクバー以外も確認対象になる |
プロフィールを隠す設定の対象はスタート内の表示だ。画面共有中のブラウザー、通知、開いているファイルまで匿名化されるわけではない。配信や会議で使う場合は、実際に共有する範囲を確認したい。
出典:Microsoft「スタートのカスタマイズ方針」、Microsoft「Release Previewで先行公開された検索などの変更」、Microsoft「一般向けプレビューの改善内容」
左右配置で画面はどれだけ広がる?3つの独自計算
左右配置は縦方向の表示を増やせる一方、横幅を消費する。「画面が広くなる」と「作業しやすくなる」は、分けて確かめる必要がある。
以下では、自動的に隠す機能を使わず、タスクバーが常に表示される条件を置く。横置きの高さを48、縦置きの幅を64論理ピクセルと仮定した。これらは比較のための設定値であり、KB5120998の標準寸法や実測値を示すものではない。
論理ピクセルは、表示倍率を考慮した画面上の座標の単位だ。本稿の簡易モデルでは「画面解像度÷表示倍率」で計算し、ウィンドウの枠やアプリ内のツールバーなどは除外している。
独自計算1:画面全体の占有率と、左右配置が有利になる境界
同じバーの寸法を仮定すると、横長の画面では左右配置のほうが占有面積を抑えやすい。ただし、改善幅は条件によって変わる。
| 画面・表示倍率 | 論理上の画面サイズ | 下置きの占有率 | 左右置きの占有率 | 残る面積の増加率 |
|---|---|---|---|---|
| 1920×1080・100% | 1920×1080 | 4.44% | 3.33% | 約1.16% |
| 1920×1080・150% | 1280×720 | 6.67% | 5.00% | 約1.79% |
| 2560×1440・125% | 2048×1152 | 4.17% | 3.13% | 約1.09% |
| 3440×1440・100% | 3440×1440 | 3.33% | 1.86% | 約1.52% |
「占有率」は画面全体に占めるタスクバーの面積。「残る面積の増加率」は、下置き時の作業領域を基準として、左右置きでどれだけ増えるかを計算した値だ。作業速度の向上率ではない。
計算式は、画面の横幅をW、高さをH、横置きバーの高さをb、縦置きバーの幅をsとすると、次のようになる。
- 下置きの作業領域:W×(H−b)
- 左右置きの作業領域:(W−s)×H
- 左右置きが面積で有利になる条件:s<W×b÷H
例えば1920×1080でb=48なら、境界は約85.3論理ピクセル。縦置きバーの幅がこれより狭ければ面積は増え、広ければ減る。実際のバーを測れば、同じ式で自分の環境を比較できる。
下置きから上置きに変えるだけなら、同じ高さのバーが占める面積は変わらない。小型化の効果を比較する場合は、小型バーの実際の高さをbへ代入する必要がある。
独自計算2:表示倍率150%では、2分割の横幅が640から608へ
左右配置で面積が増えても、ブラウザーと資料を左右に並べる作業では、1画面あたりの横幅が減って不便になる場合がある。
1920×1080を150%表示で使うモデルでは、論理上の横幅は1280になる。これを左右均等に2分割した場合、1ウィンドウの横幅は次の通りだ。
| タスクバーの位置 | 2分割した1ウィンドウの横幅 |
|---|---|
| 下置き | 1280÷2=640論理ピクセル |
| 左右置き | (1280−64)÷2=608論理ピクセル |
| 差 | 32論理ピクセル減少、横幅は5%減 |
仮に、ある作業画面で横幅620を下回ると重要なパネルが折り畳まれるなら、下置きでは表示できても左右置きでは隠れる。620という境界も説明用の仮定であり、特定のアプリの仕様ではない。
この条件では作業領域の面積は約1.79%増えるが、1ウィンドウの横幅は5%減る。文章の折り返しや表の横スクロールが増えるなら、下置きのまま小型化するほうが使いやすい可能性がある。
独自計算3:ウルトラワイドではポインターの移動距離が増える場合も
ウルトラワイド画面で左右配置を選ぶと、縦の表示領域を確保しやすい反面、中央からタスクバーへ向かう距離は長くなり得る。
画面中央から、各タスクバーの中央へ直線で移動する単純モデルで比較する。バーの寸法は前述と同じ仮定を使う。
| 画面・表示倍率 | 下置きまでの距離 | 左右置きまでの距離 | 距離の比 |
|---|---|---|---|
| 1920×1080・100% | 516論理ピクセル | 928論理ピクセル | 約1.80倍 |
| 3440×1440・100% | 696論理ピクセル | 1688論理ピクセル | 約2.43倍 |
式は、下置きが(H−b)÷2、左右置きが(W−s)÷2だ。実際にはアイコンの位置、ポインターの速度・加速、操作を始める場所、複数ディスプレイの配置で変わる。手を動かす距離やクリックに必要な時間が、そのまま2.43倍になるという意味ではない。
記事を書いたりコードを読んだりする時間が長い人と、マウスで頻繁にアプリを切り替える人では、同じ画面でも最適な配置が異なる。この計算は、その違いを確認するための判断材料になる。
Windows 10から何が戻った?macOS・ChromeOSとの比較
タスクバーの4方向配置は、Windows全体で初めて登場した機能ではない。Windows 10で利用できた選択肢が、Windows 11の標準機能として戻る変更と捉えるのが適切だ。
| OS・機能 | 標準設定で選べる位置 | 比較上の注意点 |
|---|---|---|
| Windows 10のタスクバー | 上・下・左・右 | 以前から4方向配置に対応 |
| Windows 11の新機能未提供環境 | 下 | アイコンの左揃えとバーの位置変更は別 |
| Windows 11の新機能提供環境 | 上・下・左・右 | 左右配置には前述の機能制限がある |
| macOSのDock | 下・左・右 | サイズ変更・自動非表示にも対応 |
| ChromeOSのシェルフ | 下・左・右 | 自動非表示にも対応 |
比較は標準設定の位置選択に限定した。Dock、シェルフ、Windowsのタスクバーは役割や挙動が同一ではないため、選択肢の数だけでOS全体の使いやすさを順位付けすることはできない。
出典:Microsoft「Windows 10/11のタスクバー設定」、Microsoft「新しい配置機能」、Apple「Dockの設定」、Google「シェルフの設定」
Windows 11の提供開始日は2021年10月5日。そこから今回の一般向けプレビュー公開までは、日付の差で1787日となる。ただし、この数字は全ユーザーが機能を使えるまでの日数を意味しない。
出典:Microsoft「Windows 11の提供開始日」。1787日は本稿による日付差の計算。
過去にも、Windows 11ではタスクバーのボタンを結合しない表示が2023年のInsiderビルドで追加された。今回も、以前の操作習慣を取り戻す方向の変更として位置付けられる。
出典:Microsoft「2023年のタスクバー非結合表示」
Microsoftは2026年5月の開発ブログで、位置変更を要望の多かった機能の一つと説明していた。本稿では今回の価値を、設定項目の増加だけでなく、以前からの操作習慣を維持しやすくなる点にあると考える。新しい操作を覚える負担は減らせても、PC全体の速度や安定性が一律に上がるわけではない。
出典:Microsoft「タスクバーの位置変更に寄せられた要望」。操作習慣への評価は本稿の分析。
更新しても移動できないときは、KB番号だけで判断しない
「KB5120998が入っている」という情報だけでは、配信段階も新機能の有効化も判断しきれない。OSビルドと、実際の設定項目を併せて確認したい。
| 公開段階 | 公開日 | 24H2/25H2のビルド | KB番号 |
|---|---|---|---|
| InsiderのRelease Preview | 2026年8月14日 | 26100.9267/26200.9267 | KB5120998 |
| 一般向けの任意プレビュー | 2026年8月27日 | 26100.9278/26200.9278 | KB5120998 |
両者は13日違いで公開され、KB番号は共通だがビルド番号が異なる。8月前半の記事やスクリーンショットと比較するときは、この違いが重要になる。
出典:Microsoft「8月14日のRelease Preview」、Microsoft「8月27日の一般向けプレビュー」。13日は本稿による日付差の計算。
- OSのバージョンとビルドを確認する:「設定」→「システム」→「バージョン情報」のWindowsの仕様を確認する。
- 更新履歴を確認する:KB5120998の適用状況と、再起動が完了しているかを確認する。後続の累積更新が入っている場合は、そのリリースノートも確認する。
- 設定項目の有無を確認する:「タスクバーの位置」がまだなければ、段階的な展開の途中である可能性を考える。
- 提供条件と利用環境を確認する:左右で小型表示が使えないのは現時点の制限。会社管理のPCやタスクバー変更ツールを使う環境では、管理者や提供元の案内も確認する。
項目が見つからないだけで、レジストリ変更や非公式の強制有効化を急ぐ必要はない。導入時期の問題なのか、仕様上の制限なのかを先に分けるほうが、切り分けやすい。
「不具合なし」とは断定できない。マウスポインターの報告をMicrosoftが調査
2026年8月30日の確認時点では、KBの説明ページと障害ダッシュボードを両方読む必要がある。マウスポインターのカスタマイズが失われる報告について、Microsoftは原因を調査中だ。
KB5120998のページには、既知の問題を把握していない旨の記載が残っている。一方、Windows release healthには8月28日付で、適用後にカーソルの見た目やアニメーションが変わる報告が掲載された。高DPI用カーソルが大きい白いカーソルに置き換わる、といった症状も挙げられている。
ステータスは「Reported」で、Microsoft側の問題かどうかも調査対象としている。したがって、「Microsoftが更新の不具合と確定した」とも、「公式に問題なしなので安全」とも言い切れない。掲載情報から発生率や全端末への影響も分からない。
該当する症状が出た場合、MicrosoftはフィードバックHubからの報告を求めている。ポインターの視認性を自分向けに調整している人は、更新前の設定を記録し、業務用PCでは任意プレビューの導入時期を慎重に選びたい。
出典:Microsoft「マウスのカスタマイズ設定が失われる報告」、Microsoft「KB5120998の既知の問題欄」
企業・開発者はWMICの削除も確認したい
仕事用PCでは、タスクバーの見た目より、古いスクリプトが呼び出す「wmic.exe」の削除が大きな影響を持つ場合がある。
Microsoftは、Windows 11 24H2・25H2の2026年8月プレビュー更新にWMICの削除を含め、追加機能としての提供も終了すると案内している。ただし、Windowsの管理基盤であるWMI自体が削除されるわけではない。
資産情報の取得、監視、セットアップ処理などでWMICを使っている場合は、PowerShellのGet-CimInstanceなどへの移行を検討し、実際のスクリプトで結果を検証する必要がある。
本稿の分析では、一般ユーザーにとっては操作の選択肢が増える更新でも、組織にとっては運用ツールの互換性を確認する更新でもある。UIの改善だけを理由に、全台へ一斉展開する判断は避けたい。
今すぐ更新するべき?用途別の判断と配置の選び方
今回の更新を早く試す価値があるのは、現在の配置に具体的な不便があり、更新後の動作確認もできる人だ。安定性を優先する仕事用PCでは、後続の月例更新や調査の進展を待つ判断もできる。
| 使い方 | まず比較したい配置 | 判断するときの確認点 |
|---|---|---|
| 文書・コードを縦に長く読みたい | 左右配置 | 表示行数が増えるか。横幅の減少で折り返しが増えないか |
| ブラウザーと資料を左右に並べる | 下置きの小型表示と左右配置 | 表の横スクロールやパネルの折り畳みが増えないか |
| マウスで頻繁にアプリを切り替える | 現在の位置を基準に上下・左右を比較 | よく操作する場所からの距離、クリックのしやすさ |
| 画面共有・配信が多い | 配置と併せてスタートの表示を調整 | 名前・画像だけでなく、通知やファイル名も確認 |
| 業務用PC・社内の標準環境 | 先に検証用端末で評価 | カーソル設定、業務アプリ、WMIC依存、管理設定への影響 |
配置を比較する際は、解像度、表示倍率、ブラウザーのズーム、開くアプリをそろえる。同じ作業を「現在の配置→候補の配置→現在の配置」の順で試し、スクロールの回数、表示できる情報量、誤クリックを記録すると、見た目だけの印象と実用性を分けやすい。
任意プレビューを導入する場合、公式案内の経路は「設定」→「Windows Update」→「詳細オプション」→「オプションの更新プログラム」。対象の更新が表示された場合に内容を確認する。会社のPCでは組織の更新方針に従いたい。
KB5120998によって、Windows 11の配置を従来の作業習慣に合わせやすくなる。ただし、4方向の機能が完全に同じになったわけではなく、導入直後から全端末で利用できるわけでもない。自分の画面と作業で効果を確認し、必要な変更だけを選びたい。
調査・計算方法
仕様はMicrosoft・Apple・Googleの一次情報を参照し、画面領域・2分割の横幅・ポインター距離・日付差は本稿で計算した。実機の性能測定や、作業時間の短縮を実証したデータではない。
数値は表に記載した解像度・表示倍率と、横置きの高さ48/縦置きの幅64論理ピクセルという仮定に基づく。割合と倍率は小数第2位に丸めた。新機能の提供状況や障害情報は変わるため、導入時には本文中の公式リンクから最新の案内を確認してほしい。



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