AIにコードの作成を手伝ってもらう働き方が、日常になりつつあります。Stack Overflowが2026年10月6日に公表した開発者調査では、AIコード支援・コーディングエージェントの利用者の73%が、毎日使うと回答しました。[1][2]
ただし、73%は開発者全体の割合ではありません。毎日使っていても、AIに仕事をすべて任せているとは限りません。調査では、結果を簡単に確認できる場合にAIを信頼する人が48%でした。仕事上の重要な判断まで信頼する人は6.6%にとどまります。[3]
今回の調査からは、AIが普及する一方で、開発者が確認や判断を担いながら使っている様子がうかがえます。利用率が誰を対象とした数字なのか、競合ツールがどう使われているのか、実際に時間を短縮できるのかを分けて考えると、開発者の働き方の変化が見えてきます。
「73%」は誰の割合?開発者全体との違い
73%の対象は、仕事でAIコード支援やコーディングエージェントを使うと答えた人です。AIコード支援は、コードの補完や修正案の提示を行う道具です。コーディングエージェントは、ファイルの変更やテストなど、複数の作業を進める仕組みを指します。今回の質問では、両者を一つの区分にまとめています。[2]
「仕事でどのAIツールを使っているか」という質問には、1万7,464人が回答しました。そのうち、AIコード支援・コーディングエージェントの利用者は1万1,509人で、65.9%を占めました。[4]
| 指標 | 人数・割合 | 数字の対象 |
|---|---|---|
| AIコード支援・コーディングエージェントを利用 | 1万1,509人、65.9% | AI利用状況の質問に答えた1万7,464人 |
| そのツールを毎日使用 | 8,403人、73.0% | 上記の利用者1万1,509人 |
| 毎日使う人数をAI利用状況の回答者数で割った割合 | 約48.1% | 8,403人÷1万7,464人。本記事の独自計算 |
独自計算では、8,403÷17,464×100=約48.1%です。利用者の中では約4人に3人が毎日使っています。AI利用状況の質問に答えた人全体を基準にすると、毎日使う人は約半数に相当します。
この48.1%も、世界中の開発者を代表する推計ではありません。調査全体の有効回答数3万903人とも対象が異なります。数字を比べるときは、「何人のうちの割合か」をそろえる必要があります。[5]
コード支援はチャットAIより毎日使う人の割合が高い
利用頻度を見ると、コード支援のAIは、汎用のチャットAIより毎日使われる割合が高くなっています。コード支援・コーディングエージェントでは73.0%でした。汎用チャットAIでは65.6%、AIエージェント・自動化ワークフローでは63.1%です。[2]
| AIツールの種類 | 毎日使用 | 毎週使用 | 毎月・低頻度 |
|---|---|---|---|
| コード支援・コーディングエージェント | 73.0% | 20.1% | 6.2% |
| 汎用チャットAI | 65.6% | 26.8% | 7.0% |
| AIエージェント・自動化ワークフロー | 63.1% | 25.5% | 10.3% |
| 会社が開発した社内AIツール | 47.7% | 30.2% | 20.7% |
出典:Stack Overflow Developer Survey 2026「AI tool usage frequency」。割合は、それぞれの種類の利用者を基準としています。公開値をそのまま掲載しているため、行の合計が100%にならないものがあります。[2]
コード支援と汎用チャットAIの差は7.4ポイントです。ただし、利用者の構成が違うため、この差から性能の優劣は判断できません。仕事に組み込みやすいかどうかも、利用頻度に関わると考えられます。
本記事では、AIが「困ったときに開く道具」から、日々の作業の一部になりつつあると考えます。文章での相談に加え、コードの変更や動作確認まで支援することが、利用の習慣化につながっている可能性があります。これは調査結果に基づく分析であり、原因が確かめられたわけではありません。
毎日使っても、重要な判断を任せるとは限らない
AIを信頼するかどうかは、出力を確認できるか、失敗したときにどれほど影響があるかによって変わります。信頼に関する質問には、1万4,304人が回答しました。最も多かったのは、出力を簡単に確認できるときに信頼するという回答で、48.0%でした。[3]
| AIの出力を信頼する条件 | 割合 |
|---|---|
| 出力を簡単に確認できる場合 | 48.0% |
| 多くの仕事で信頼するが、重要な判断は除く | 16.3% |
| リスクが低い仕事だけ | 16.3% |
| 多くの仕事で信頼しない | 12.3% |
| 重要な判断を含め、多くの仕事で信頼する | 6.6% |
| 分からない・AIツールを使わない | 0.5% |
出典:Stack Overflow Developer Survey 2026「Trust in AI tools」。[3]
利用頻度と信頼については、別々の質問で尋ねています。集計表だけでは、毎日使う人の何%が重要な判断を任せているかまでは分かりません。毎日使うことを、そのまま無条件の信頼と結び付けるのは避けるべきです。
電卓を毎日使っていても、入力した数字や計算方法の確認は必要です。AIによるコード支援でも、似た役割分担が考えられます。案を出す作業は速くなっても、その案が目的に合うかは人が確かめます。
過去の調査と比べるときは、質問の変化に注意
2025年と2026年の数字を引き算するだけでは、毎日使う人の割合や、信頼の変化を正しく測れません。2025年の調査では、プロの開発者の51%がAIツールを毎日使うと回答していました。2026年の73%は、コード支援・コーディングエージェントの利用者に限った数字です。[6]
対象者もツールの範囲も違うため、「毎日使う人の割合が22ポイント増えた」とは書けません。利用者の間で習慣になっているかと、開発者全体にどれほど普及しているかは、分けて追う必要があります。
信頼についての質問も変わりました。2025年はAIの出力の「正確さ」を尋ねており、信頼する人は33%でした。2026年は、確認のしやすさや仕事のリスクを含む選択肢になっています。[3][6]
2026年の条件付きの信頼を、前年の正確さへの信頼と同じ指標として扱うことはできません。今回の調査では、AIを信じるかどうかに加え、「どんな場面なら使えるか」も尋ねるようになっています。
Claude CodeとGitHub Copilot、少なくとも24.2%が両方を利用した経験
競合ツールの利用率は、どちらか一つを選んだ結果を表す市場占有率ではありません。過去1年間に使ったコード支援・コーディングエージェントを尋ねた質問では、Claude Codeが65.5%、GitHub Copilotが58.7%でした。回答者数は1万2,255人で、複数の製品を選べます。[7]
| ツール | 過去1年間に使った人数 | 割合 |
|---|---|---|
| Claude Code | 8,030人 | 65.5% |
| GitHub Copilot | 7,196人 | 58.7% |
| OpenAI Codex | 3,620人 | 29.5% |
| Cursor | 3,127人 | 25.5% |
出典:Stack Overflow Developer Survey 2026「AI coding agents」。順位は利用経験を集計したもので、性能や満足度の順位ではありません。[7]
この数字から、上位2製品を両方使った人が少なくとも何人いるかを独自計算できます。8,030+7,196-12,255=2,971人です。両製品の利用経験者を足すと、回答者全体を2,971人上回ります。
つまり、少なくとも2,971人は両方を選んだことになります。2,971÷12,255×100=約24.2%です。回答者の約4人に1人以上が、過去1年間に両製品を使った経験を持つ計算です。
ただし、現在も両方を使っているとは限りません。乗り換え前後の利用や、短期間の試用も含まれる可能性があります。正確な重複人数や、使い分けの理由は、この集計表だけでは分かりません。
この数字からは、利用者が首位の製品だけを選んでいるわけではないと分かります。導入を考える企業は、順位に加え、自社の作業でどの程度の完成度が得られるか、出力を確認しやすいかも比べる必要があります。
コードは任せても、公開まで任せる人は少ない
AIはコード作成に広く使われていますが、ソフトを利用者へ届ける工程での利用は限定的です。直近30日間にAIへ任せた仕事を尋ねた質問では、コードの作成・編集・生成が72.9%でした。ソフトの配備・公開は9.8%です。[8]
| AIツール・エージェントへ任せた仕事 | 割合 |
|---|---|
| コードの作成・編集・生成 | 72.9% |
| 不具合の原因調査・修正 | 62.2% |
| テストの作成・保守 | 50.6% |
| コードや変更内容のレビュー | 44.9% |
| ソフトの配備・公開 | 9.8% |
出典:Stack Overflow Developer Survey 2026「Tasks delegated to AI agents」。回答者1万3,756人、複数回答。[8]
ここでいうテストは、想定どおりに動くかを確かめる作業です。レビューは、変更内容を読んで問題がないか確認する作業を指します。コード作成の割合が高くても、完成した製品をAIだけで公開する開発が一般化したとはいえません。
なお、調査には配備や公開を担当しない職種も含まれます。9.8%という数字だけで、残りの人がAIによる公開を拒否したとは判断できません。担当する作業の範囲と、AIへの信頼は分けて考える必要があります。
毎日使えば時間を短縮できる?過去の実験では結果が分かれた
AIを使う頻度が高くても、開発全体が速くなったとは限りません。今回の調査は利用率を尋ねたもので、作業時間を測った実験ではありません。過去の実験でも、作業の条件によって結果が分かれています。
GitHubが2022年に公表した実験では、95人の開発者がJavaScriptでHTTPサーバーを作りました。HTTPサーバーは、ウェブの要求を受けて応答するプログラムです。Copilotを使ったグループは、使わないグループより約55%速く課題を完了したと報告されています。[9]
一方、評価機関METRが2025年7月に公表した実験では、AIを使うと所要時間が19%増えました。対象は、公開ソフトの開発に長年関わってきた16人です。実際の修正や機能追加など、246件の課題を扱いました。[10]
二つの実験は、同じ条件で競合製品を比べたものではありません。時期、ツール、課題、開発者の経験が異なります。2025年初めのツールを扱ったMETRの結果を、2026年の全製品へ当てはめることもできません。
ただ、利用者の感想や普及率だけでは効果を判断できないことは分かります。新しいコードを作る時間に加え、既存の仕組みとの整合性を確かめる時間も必要です。合計の作業時間を測ると、導入の効果を見極めやすくなります。
独自試算:作成が30分速くても、確認や修正が40分増えれば逆効果
AIの効果を測るなら、「コード作成・確認・修正」の合計時間を比べる必要があります。以下は仕組みを説明するために置いた仮定です。Stack Overflowの実測値や、特定製品の性能を表すものではありません。
AIを使わない場合、コード作成に60分、確認に20分、修正に10分かかるとします。合計は90分です。AIでコード作成が30分になっても、その後の確認や修正にかかる時間によって結果は変わります。
| 仮定した作業 | 作成 | 確認 | 修正 | 合計 | AIなしとの差 |
|---|---|---|---|---|---|
| AIなし | 60分 | 20分 | 10分 | 90分 | 基準 |
| AIあり・確認と修正が少ない | 30分 | 25分 | 15分 | 70分 | 20分短縮、約22.2%減 |
| AIあり・確認と修正が多い | 30分 | 40分 | 30分 | 100分 | 10分増加、約11.1%増 |
この例では、AIを使った場合の確認と修正が合計60分なら、全体は90分で変わりません。60分を下回れば時間短縮になり、上回れば遅くなります。作成時間が半分になっても、全体の時間が半分になるとは限りません。
短縮率は、20÷90×100=約22.2%です。増加率は、10÷90×100=約11.1%になります。同じAIでも、確認しやすい小さな変更と複雑な変更では、結果が変わると考えられます。
導入時には、難しさが近い作業を複数回行い、結果を比べる方法が考えられます。完成までの時間に加え、差し戻しや公開後の不具合も記録します。試す順番によって作業に慣れることの影響にも、注意が必要です。
開発者・企業・利用者にとって何が変わるのか
これからの開発では、AIに指示する力とともに、出力を確かめて説明する力が重要になると考えられます。これは、今回の利用率と条件付きの信頼を合わせて考えた、本記事の分析です。調査が将来の職種や雇用を予測したわけではありません。
開発者は、コード作成でAIの支援を受けられます。ただし、理解していないコードが増えると、確認や保守の負担も増します。AIが書いた部分でも、なぜその変更が必要なのかを説明できることが大切です。
企業は、導入率や使用時間だけで成果を判断しないようにする必要があります。完成までの時間、手戻り、不具合を合わせて見ると、効果と負担の両方が分かります。今回の集計から、AIを多く使う社員ほど成果が高いと判断することはできません。
アプリやウェブサービスの利用者は、機能が早く追加される恩恵を受ける可能性があります。ただし、開発の速さと製品の品質は別です。「AIで開発した」という説明だけでは、信頼性の根拠になりません。
学習者も、コードを生成できたことと、内容を理解できたことを分けて考える必要があります。AIの案を動かしたら、処理の流れや失敗する条件を自分で説明してみる。その確認が、次の課題を解く力につながります。
調査の限界と、今回のニュースで押さえておきたいこと
今回の数字は、Stack Overflowを通じて集まった回答者の状況を表しています。開発者全体から無作為に選んだ人への調査ではありません。調査期間は2026年6月23日から8月5日までです。169カ国から3万903件の有効回答が集まりました。[5][11]
調査の告知は、Stack Overflowのサイト、ブログ、登録者向けメールを通じて行われました。参加者には偏りがある可能性があります。また、質問ごとに回答者数が違います。日本の開発者の状況や、AIによる雇用への影響を、この集計だけで断定することはできません。
押さえておきたいのは、AIコード支援の利用が習慣になっていることです。その一方で、重要な判断まで信頼するという回答は少数でした。競合ツールについても、一つだけを選んでいるとは限りません。
73%という数字から見えてくるのは、AIを使いながら人が確かめる働き方です。AIだけで開発が完結することを示す数字ではありません。効果を評価するには、生成の速さに加え、完成までにかかった時間と品質を見る必要があります。
関連ページ
AIを使うことと、仕事をどこまで任せるかの違いは、次の関連記事でも確認できます。
出典・参考資料
調査の数値はStack Overflowの一次資料を、過去の実験については実施機関の公開資料を参照しました。独自計算と仮定に基づく試算は、本文中で区別しています。確認日:2026年10月7日。調査データの提供元はStack Exchange Inc.、ライセンスはODbL 1.0です。
- Stack Overflow:The results of the 2026 Developer Survey are here!(2026年10月6日)
- Stack Overflow Developer Survey 2026:AI tool usage frequency
- Stack Overflow Developer Survey 2026:Trust in AI tools
- Stack Overflow Developer Survey 2026:AI tool usage
- Stack Overflow Developer Survey 2026:Methodology
- Stack Overflow Developer Survey 2025:AI
- Stack Overflow Developer Survey 2026:AI coding agents
- Stack Overflow Developer Survey 2026:Tasks delegated to AI agents
- GitHub:GitHub Copilotが開発者の生産性と満足度に与える影響を数値化(2022年)
- METR:Measuring the Impact of Early-2025 AI on Experienced Open-Source Developer Productivity(2025年7月10日)
- Stack Overflow Developer Survey 2026:調査全体



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