メモリ不足は2027年が最悪?スマホ・ノートPC値上げが長期化する理由

スマートフォンやノートパソコンの値上がりが、2027年まで続く可能性が出てきました。

背景にあるのは、AI向けデータセンターで大量に使われるメモリです。メモリメーカーがAI向けを優先したことで、一般製品に回る量が減っています。

ただし、2027年にスマホやパソコンの価格が最高値になると決まったわけではありません。

「2027年が最悪」という見方は、主に供給能力から見た予測です。実際の店頭価格は、為替や販売競争、ほかの部品価格にも左右されます。

SK hynixは2027年を「供給面で過去最悪」と予測

SK hynixは、2027年がメモリ業界にとって過去最悪の供給不足になるとみています。

SK hynixのクァク・ノジョンCEOは、2026年7月のインタビューで、この見通しを示しました。

同社の顧客からの需要は増え続けています。しかし、生産能力には限界があります。

同CEOは、2030年を超えても需要が供給能力を上回る可能性があると説明しました。

ただし、これはSK hynixによる需要予測です。業界全体で確定した将来予測ではありません。

UBSも、世界のDRAM市場では少なくとも2028年第2四半期まで供給不足が続くと予想しています。

DRAMとは、スマホやパソコンが作業中のデータを一時的に保存するメモリです。一般にはRAMとも呼ばれます。

値上がりの速度は鈍化しても不足は終わらない

メモリ価格の上昇率は下がっていますが、価格そのものはまだ上昇しています。

TrendForceによると、一般的なDRAMの契約価格は、2026年第3四半期に13~18%上がる見通しです。

第1四半期の上昇率は93~98%でした。これと比べると、値上がりの勢いは大きく鈍っています。

時期DRAM契約価格の変化市場の状態
2026年第1四半期93~98%上昇価格が急上昇
2026年第3四半期13~18%上昇予測上昇は鈍化したが継続

上昇率の中央値で見ると、第1四半期は95.5%、第3四半期は15.5%です。

単純計算では、上昇の勢いが約84%弱まったことになります。

ただし、値下がりしたわけではありません。高値の状態から、さらに13~18%上がるという予測です。

AI向けHBMが一般製品用のメモリを圧迫

今回の不足は、AI向けHBMと一般製品用DRAMが生産能力を取り合っていることが大きな原因です。

HBMは、AI用GPUの近くに配置される高速メモリです。複数のメモリを縦に積み重ねて作ります。

AIデータセンターでは、大量のデータを高速で処理します。そのため、HBMの需要が急速に増えました。

Samsung、SK hynix、Micronなどは、収益性の高いAI向け製品を優先しています。

その結果、スマホ用LPDDRやパソコン用DDRに回せる生産能力が減っています。

メモリの種類主な用途不足した場合の影響
HBMAIサーバー、AI向けGPUAIアクセラレーターが値上がり
DDRデスクトップ、ノートPC、サーバーパソコンのRAM容量縮小や値上げ
LPDDRスマホ、薄型ノートPCスマホやモバイルPCが値上がり
NANDSSD、スマホの保存容量SSD容量縮小や上位モデルの値上げ

HBMとスマホ用メモリは、まったく同じ製品ではありません。

ただ、工場や原材料、技術者、投資資金には共通する部分があります。そのため、HBMの増産は一般向けメモリの供給にも影響します。

新工場を建てればすぐ解決するわけではない

メモリ工場は、需要が増えたからといって短期間で増やせるものではありません。

工場の建設には、広い土地に加えて大量の電力や水が必要です。製造装置や専門技術者も確保しなければなりません。

工場が完成しても、すぐに量産できるとは限りません。製造工程を安定させ、歩留まりを高めるまでに時間がかかります。

歩留まりとは、作った半導体のうち正常に使える製品の割合です。新しい工程では、この割合が安定するまで時間が必要です。

Micronは2035年までに、米国へ2,500億ドル以上を投資する計画です。

SamsungとSK hynixも大規模な増産を進めています。それでも、2027年の不足には間に合わない可能性があります。

過去の暴落経験がメーカーを慎重にさせている

メーカーが急いで増産しない理由には、2022~2023年のメモリ不況があります。

コロナ禍ではパソコンやスマホの需要が増えました。しかし、その後は需要が急速に落ち込みました。

メモリの在庫が積み上がり、DRAMやNANDの価格も下落しました。

Micronの2023年度第2四半期には、在庫評価損が14億3,000万ドルに達しました。

売上総利益率も、前年同期の47%からマイナス33%へ悪化しています。

NANDの平均販売価格は、前年同期比で30%台後半も下がりました。

こうした経験があるため、メモリ各社は過剰な設備投資を避けています。需要が急減すると、大規模な工場が赤字の原因になるからです。

メーカーにとっては、現在の高価格を保ちながら、慎重に生産能力を増やす方がリスクを抑えられます。

スマホ出荷台数は過去最大の減少になる可能性

メモリ不足は、製品価格に加えて、スマホの販売台数にも影響しています。

Counterpoint Researchは、2026年のスマホ出荷台数を10億8,000万台と予測しています。

前年から13.9%減り、過去最大の年間減少率になる見通しです。

この予測から前年の台数を逆算すると、約12億5,400万台になります。

つまり、1年間で約1億7,400万台減る計算です。

特に厳しいのが低価格スマホです。販売価格が安いため、メモリ価格の上昇分を吸収しにくくなります。

約400ドルのスマホでは、メモリが部品原価の約60%を占める場合もあります。

メーカーは値上げだけで対応せず、低価格モデルそのものを減らす可能性もあります。

独自計算では平均価格が約14%上がる構図

出荷台数と売上高の予測から計算すると、スマホとパソコンの平均価格は約14%上がる構図です。

IDCは、2026年の世界パソコン出荷台数が11.3%減ると予測しています。

その一方で、パソコン市場の売上高は1.6%増える見通しです。

出荷台数を88.7、売上高を101.6として計算します。

101.6を88.7で割ると、1台あたりの平均価格は約14.5%上がります。

スマホは出荷台数が12.9%減り、売上高は0.5%減る予測です。

同じ方法で計算すると、平均価格は約14.2%上がります。

製品出荷台数予測売上高予測平均価格の独自試算
パソコン11.3%減1.6%増約14.5%上昇
スマートフォン12.9%減0.5%減約14.2%上昇

これは個別製品の値上げ率ではありません。市場全体の売上高と出荷台数から求めた平均値です。

高価格モデルの割合が増えることでも、平均価格は上がります。

同じ価格でもRAMやSSDが減る「見えにくい値上げ」

今後は価格の上昇だけでなく、同じ価格帯で容量が減る実質的な値上げにも注意が必要です。

IDCは、これまでならRAM 12GB、保存容量256GBだったスマホを例に挙げています。

今後は同じ価格でも、RAM 8GB、保存容量128GBになる可能性があります。

ノートパソコンでも、RAMやSSDの容量が減ると予測されています。

たとえば、16GB・512GBが標準だった価格帯で、8GB・256GBの製品が増えるといった形です。

本体価格が変わらなければ、実質的な値上げには気づきにくくなります。

購入するときは価格だけを見るのではなく、RAMとSSDの容量も前年モデルと比べる必要があります。

大手と中小メーカーでは対応力に差がある

不足が続く状況では、価格交渉力の強い大手メーカーが有利になります。

大手は大量のメモリを長期契約で確保できます。前払いを含む契約にも対応しやすいためです。

中小メーカーの場合は、必要な数量そのものを確保できないことがあります。

現在は「いくらで買えるか」よりも、「割り当てを受けられるか」が重要になっています。

メーカー主な対策消費者への影響
Fairphone現時点では値上げを見送り価格を維持するが利益が圧迫される
Jolla基板を2種類用意し、メモリ構成を変更メモリ増量を有料オプション化
FrameworkRAMを交換できる設計を採用旧PCのメモリを再利用できる
世界的大手大量契約と強い購買力で在庫を確保供給は安定しやすいが値上げ余地はある

Jollaは、仕入れたメモリが新品かどうかも検査しています。

不足が続くと、中古品を新品として販売する業者が出てくる可能性があるためです。

Frameworkは早めに注文を出していますが、最終価格や納期、数量が確定しないまま発注する場合もあります。

2027年が店頭価格の最高値とは限らない

供給不足が最も厳しい年と、消費者価格が最も高くなる年は一致しない場合があります。

メーカーが早めに在庫を確保すれば、店頭価格への影響が遅れて出ることがあります。

逆に、スマホやパソコンの需要が落ちれば、値引き販売が増える可能性もあります。

日本では円相場の影響も無視できません。円高になれば、メモリ価格の上昇分を一部相殺できる場合があります。

CPUやディスプレイなど、ほかの部品が安くなる可能性もあります。

こうした要因があるため、「2027年に必ず最も高くなる」と断定するのは正確ではありません。

メモリ不足が予想より早く終わる可能性もある

AI投資が減速すれば、メモリ不足が予想より早く緩和する可能性があります。

現在の予測は、AIデータセンターへの大型投資が続くことを前提にしています。

しかし、AIサービスの収益が投資額に追いつかなければ、計画が縮小される可能性があります。

中国のメモリメーカーが生産量を増やすことも、価格を下げる要因になります。

スマホやパソコンの販売不振が続けば、一般向けメモリの需要も減ります。

需要が減れば、供給不足も自然に縮小します。

過去のメモリ市場でも、供給不足から過剰在庫へ短期間で変わった例がありました。

それでも値上げが長期化しやすい理由

今回は単なる一時的な品不足ではなく、メモリの優先供給先が変わったことが重要です。

以前は、スマホやパソコンがメモリ市場の中心でした。

現在は、AIデータセンターが高い価格でも大量のメモリを購入します。

メモリメーカーからすると、一般消費者向けよりもAI向けを優先した方が収益を伸ばしやすくなります。

新工場が稼働しても、その生産能力がHBMに振り向けられる可能性があります。

そのため、工場が増えたからといって、スマホやパソコン用メモリの不足が解消するとは限りません。

スマホやノートPCを買う人への影響

2027年まで待てば安くなるとは限らないため、必要な製品は価格と容量を比べて判断するのが現実的です。

特に影響を受けやすいのは、低価格スマホと10万円以下のノートパソコンです。

この価格帯は利益が少なく、メーカーが部品価格の上昇分を吸収しにくいためです。

  • 本体価格だけでなくRAMと保存容量を確認する
  • 前年モデルや在庫処分品も比較する
  • RAMやSSDを交換できる機種を選ぶ
  • 購入後の増設費用まで含めて計算する
  • 不自然に安いメモリやSSDには注意する

ただし、急いで買う必要がない人まで慌てて購入する必要はありません。

完成品の価格は、販売店の在庫状況やセールでも変わります。メモリ価格だけで買い時が決まるわけではありません。

今後の見通し

2027年は供給面の厳しさが増す可能性がありますが、2028年以降は一部で回復も予測されています。

時期予想される動き
2026年後半値上がり率は鈍化しても、高値が続く
2027年供給能力から見て最も厳しくなる可能性
2028年IDCはPCとスマホ市場の本格回復を予測
2030年以降SK hynixは需要超過が残る可能性を指摘

今回の不足は、価格だけを見ていると実態をつかみにくい問題です。

値上げを避ける代わりに、RAMやSSDの容量を減らす製品も増える可能性があります。

今後は「何円上がったか」だけでなく、「同じ価格で何が減ったか」を見る必要があります。

まとめ

メモリ不足は2027年に悪化する可能性が高いものの、製品価格の最高値になるとは断定できません。

AI向けHBMを優先した生産と、メーカーの慎重な設備投資が不足を長引かせています。

独自計算では、2026年のスマホとパソコンの平均価格は約14%上がる構図です。

低価格製品では、値上げに加えてRAMやSSDの容量が減る可能性もあります。

購入するときは、価格、容量、増設できるかどうかを合わせて比べる必要があります。

参考資料

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